しじみの加熱調理の必要性

しじみを食べる、というとみそ汁やつくだ煮、炊き込みご飯など加熱料理したものが代表的ですが、新鮮なしじみが手に入った時、「せっかく新鮮なのだから生食がおいしいのでは?」と思われた方もいるかもしれません。しじみの加熱調理の必要性についてご紹介します。

なぜ加熱調理が必要なのか

しじみを調理するときはよく加熱することが必要です。これは、単に味覚の問題ではなく、食中毒を予防する上でも重要なのです。

食中毒の原因のひとつ、ノロウィルス

冬になるとニュースで見かけるようになる、嘔吐・下痢症。原因の一つに、ノロウィルスがあります。2013度の厚生労働省食中毒統計資料によると、発生件数で第一位、患者数でも第一位と食中毒になった場合真っ先に疑われるウィルスです。感染力が非常に強く、患者の嘔吐したものや便からの細かい飛沫が空中に浮遊していたものからも感染した例があるほどです。潜伏期間は1~2日、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状がみられます。症状には個人差がありますが、重症になると下痢による脱水症状に陥ったり、お年寄りでは嘔吐物を喉に詰まらせて亡くなるケースもあります。

しじみにもノロウィルスがいる可能性

食中毒の原因としてよく聞くのは牡蠣ですが、これは生食をする機会が多いためです。ノロウィルスは85℃で一分以上加熱することでその感染力を失うとされています。通常の加熱調理をすれば十分防げるものなのです。牡蠣と同じ二枚貝であるしじみにも、ノロウィルスがいる可能性があります。これは、二枚貝がプランクトンなどの餌を食べる際一緒にウィルスも濾し取り、中腸線に蓄えているためです。どんなに新鮮であっても、非加熱の場合ノロウィルスを摂取してしまうリスクがあります。

A型肝炎に感染することも

非加熱の二枚貝を食べて感染する可能性があるのはノロウィルスだけではありません。A型肝炎ウィルスに感染してしまった場合、ノロウィルスよりも劇症化し重篤な状態に陥る可能性もあるのです。A型肝炎ウィルスも、85℃で一分以上加熱すれば不活化されます。しじみを食べるときも、十分加熱をするようにしましょう。

日本の昔からのしじみ料理は加熱調理するものがほとんどですが、台湾料理などでしじみの醤油漬け、酒漬けが出されるようです。東京都で2001年に発生した食中毒のうち、しじみによるものは3件で、全て台湾料理であったと言います。ウィルスはアルコールでは死にませんので、加熱していない二枚貝を食べるときには注意が必要です。健康のためしじみを食べよう、という方も多いと思います。食中毒になってしまっては元も子もありませんので、加熱はしっかりするようにしましょう。