セタシジミって?

鮮魚売り場へ行くと、ほぼ通年目にするしじみ。日本人にはなじみの深い貝類ですね。ひと口にしじみと言っても、いろいろな種類があることをご存知でしょうか?日本の在来種のひとつである、セタシジミについてご紹介します。

セタシジミとは

日本にもともと生息している在来種のしじみはヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミの三種類とされています。このうちセタシジミは、もとは琵琶湖水系にしか生息していなかった固有種を指します。漢字で「瀬田蜆」と書きますが、琵琶湖から流れ出る瀬田川に多く生息していたことに由来します。

琵琶湖の固有種

セタシジミは琵琶湖および琵琶湖の水がそそぐ河川の、浅瀬から水深10メートルくらいまでの砂礫底や砂泥底に生息しています。汽水域に生息するヤマトシジミと異なり淡水性で、また、雌雄同体のマシジミと異なり雌雄異性体で、体外受精を行い寿命は7~8年とされています。3歳で殻長15ミリほどになり産卵を開始し、4歳で殻長20ミリほどとなります。

琵琶湖名産、庶民の味

セタシジミはヤマトシジミなどに比べ殻が厚く、身にコクがあると言われその旬は身が肥える冬季とされています。1970年代頃までは浅瀬で簡単に獲れたことから、庶民の食卓に上がることも多く、セタシジミのみそ汁、しぐれ煮、しじみ飯が家庭の味として親しまれ、また琵琶湖の特産品としても知られていました。

漁獲高の激減でローカルな存在に

かつては琵琶湖で多く漁獲され、全国的に流通していました。琵琶湖での漁業全体の漁獲量の半分以上を占めるほどの重要な漁獲資源であったのですが、1957年の漁獲量6,072トンをピークに減少を続け、2007年にはピーク時のおよそ120分の一となる52トンまで激減しました。

関西圏のみの流通に

漁獲高の激減に伴い流通量も激減しました。現在では関東で手に入れることはできず、旬である12月~4月にかけて滋賀県内や京都の小売店やスーパーなどでみかけるのみとなっているようです。

環境保全のシンボルに

最近ではセタシジミを琵琶湖の環境保全のシンボルとして位置づけ、稚貝の生産・放流、稚貝の放流水域の耕耘及び水草除去をはじめとする水質改善や漁獲する殻長の引き上げを申し合わせるなど、漁業組合と滋賀県がセタシジミの回復に積極的に取り組んでいます。

現在では限られた地域でしか手に入れることのできなくなってしまったセタシジミ。滋賀、京都を訪れた際はぜひ古くからの家庭の味を味わってみてください。