外来種という言葉を聞いたことはあるでしょうか。外来種とは、もともとその地域に生息していなかったのに人間の活動によって他の地域から入ってきた生物のことを指します。
シジミの在来種と外来種
日本人には古くからなじみの深いシジミですが、日本国内だけでなく海外にも生息しています。見た目では区別をつけるのが難しいですが、海外のシジミは日本のものと遺伝子的に異なり、違う種類のシジミとして扱われます。日本国内にもともと生息しているシジミを在来種といい、日本のシジミの在来種はヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミの三種類です。これ以外の地域から入ってきたシジミは全て外来種になります。
生息を広げる外来種タイワンシジミ
シジミの外来種として知られているのが、タイワンシジミです。タイワンシジミはその名の通り台湾、中国をはじめ東アジア各地の淡水域に生息しています。同じ淡水域に生息する在来種のマシジミと遺伝的にきわめて近く、見た目も非常に似ており、正確に同定するには遺伝子検査が必要になるほどです。
減ってゆく在来種マシジミ
タイワンシジミが国内各地で生息確認されているのに対し、マシジミは全国で激減していることが報告されています。これは、タイワンシジミがマシジミの生息域に侵入してきたことによる影響が大きいとされています。
タイワンシジミに置き換わってしまうマシジミ
マシジミとタイワンシジミは雄性発生という、受精後精子側の核情報のみが残るという特殊な繁殖様式をとっています。そのため、水中に大量放出されるタイワンシジミの精子でマシジミの卵が受精すると、遺伝子的にはほとんどタイワンシジミの稚貝が誕生するという事態が起きます。マシジミの生息地にタイワンシジミが侵入し、数年後にはマシジミが消失しタイワンシジミに置き換わるという事例も報告されています。
タイワンシジミはなぜ入ってきたか
広がり続けるタイワンシジミはどのように国内に入り、広がったのでしょうか。まずタイワンシジミは食用として輸入され国内に持ち込まれました。その後、蓄養(国産と表示するために販売前に国内の河川や湖沼にばらまき再度採集する)や廃棄などで自然界に放たれたものが野生化し、分布を広げていったと考えられます。
タイワンシジミをこれ以上広げないために
タイワンシジミをこれ以上広げないために私たちにできることはあるのでしょうか。タイワンシジミの稚貝は非常に小さく、またマシジミとも見分けがつかないため自然保護活動の一環で放流されていたという報告もあります。異なる水域の生物を、不用意に他の水域へ持ち込んだりしないよう一人一人が意識することが大切です。
タンポポやザリガニなど、外来種にほとんど駆逐され普段は見られなくなった在来種も少なくありません。マシジミに関しては、有効な手立てがないのが現状です。見守るしかないというのは、なんとも歯がゆいですね。