二日酔いをはじめ、疲労回復に良いとされているしじみですが、体内でどのような働きをしているのでしょうか。キーワードとなるのが、「ATP」です。
ATPとは
ATPとはアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate)の略で、エネルギーの放出、貯蔵等に大きな役割を果たしている化合物であり、生体内に広く分布しています。学校の生物の授業で名前を聞いた記憶がある方も多いと思いますが、人体だけなく多くの生物がATPを利用してエネルギーを得ているのです。このアデノシン三リン酸が酵素によって分解されるとリン酸が放出されアデノシン二リン酸に転換されますが、この時放出されるエネルギーが生体エネルギーとして利用されています。
ATPを産み出すミトコンドリア
では、ATPはどのように産み出されるのかというと、ミトコンドリア内のクエン酸回路によって産み出されます。まず、糖、脂肪酸、アミノ酸からアセチルCoAが産み出されます。次に、アセチルCoAがクエン酸回路に入り、酸化、電子伝達系を経てATPが合成されるのです。食事で糖分、炭水化物、脂質、たんぱく質をバランスよく摂ったほうが良いというのはここに由来するのですね。
アンモニアを分解するオルニチン
生体エネルギーの元となるATPを合成してくれるミトコンドリアですが、疲労物質のひとつであるアンモニアの分解も行っています。この時に、アンモニアの量が多すぎるとミトコンドリアでの酸化還元のバランスが崩れ、結果的にATP、エネルギーの生成が妨害されることになります。アンモニアを分解する回路を尿素サイクル、あるいはオルニチンサイクルと呼び、しじみに多く含まれているオルニチンが重要な役割を果たしています。ですから、オルニチンを積極的に摂取することは疲労物質の分解を助けるだけでなく、エネルギーの生産をサポートすることにもつながると言えるのです。
このように、しじみが二日酔いや疲労回復に良いとされる理由は、アルコールそのものを分解するのではなく、アンモニアの解毒をサポートするところが大きいのです。アンモニアはたんぱく質を分解するときにも多く排出される物質ですので、飲酒される方だけでなく、肉料理が好きな方などもしじみを積極的に摂取されると良いでしょう。